人を雇った後の必須手続きまとめ:労働保険の年度更新・算定基礎・月額変更・給与計算の基礎知識

初めて従業員を雇った経営者様や人事ご担当者様、
「毎月の給与計算以外に、どんな手続きが必要なのか全容が見えない」
「役所から書類が届いたけれど、書き方や提出期限に漏れがないか不安」とお悩みではありませんか?

人を雇った後の会社には、毎月の「給与計算」に加えて、年1回の「年度更新」「算定基礎届」、そして状況に応じて発生する「月額変更届」という4つの重要な事務手続きが義務付けられています。

これらは労働者の権利を守り、適切な保険料を国へ納付するための法的な義務です。
手続きの漏れや遅れは、追徴金などのペナルティが発生するだけでなく、不適切な給与控除によって従業員からの信頼を損なう原因にもなりかねません。
例えば、「初めて社員を雇ったばかりで日々の業務に追われ、夏の重要な手続きを忘れてしまい、後日労働局から通知が来て慌てて対応した」といったケースは、中小企業において非常に多く見受けられます。

本記事では、経営者や人事担当者の皆様が安心できるように、人を雇った後、資格取得以外に必ず発生する事務手続きの全体像とポイントを、社会保険労務士の視点からわかりやすく解説します。


人を雇ったら必ず発生する4つの事務手続き

会社が従業員を雇用した場合、主に「労働保険(労災保険・雇用保険)」と「社会保険(健康保険・厚生年金保険)」の2つの制度に関わる手続きを並行して進める必要があります。

1. 労働保険の「年度更新」(毎年6〜7月)

労働保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間(保険年度)を単位として計算されます。

「年度更新」とは、前年度の確定した賃金総額に基づく「確定保険料」の精算と、今年度の見込み賃金総額に基づく「概算保険料」の申告・納付をセットで同時に行う手続きのことです。

  • 対象となる保険: 労災保険、雇用保険
  • 申告・納付期限: 毎年6月1日から7月10日まで
  • 提出先: 管轄の都道府県労働局、労働基準監督署、または金融機関

申告手続きが遅れると、政府が保険料を決定した上で、さらに10%の追徴金が課されることがあるため厳重な注意が必要です。

[出典:厚生労働省「労働保険の年度更新とは」]

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/hoken/roudouhoken21/index.html

2. 社会保険の「算定基礎届(定時決定)」(毎年7月)

社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、従業員の毎月の給与(標準報酬月額)を基準に計算されます。
しかし、給与変動のたびに毎月保険料を計算し直すのは非常に煩雑です。そこで、年に1回、標準報酬月額を一斉に見直す手続きが「算定基礎届(定時決定)」です。

  • 対象となる給与: その年の4月・5月・6月に実際に支払われた給与(報酬)の平均額
  • 提出期限: 毎年7月1日から7月10日まで
  • 適用期間: その年の9月分(10月納付分)から翌年8月分までの1年間適用されます。

この手続きを忘れたり計算を間違えたりすると、正しい社会保険料が天引きできず、将来従業員が受け取る年金額にも悪影響を及ぼしてしまいます。

[出典:日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」]

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20121017.html

3. 給与変動時の「月額変更届(随時改定)」

算定基礎届で決定した標準報酬月額は原則1年間固定です。
しかし、年の途中で昇給や降給などにより給与が大きく変動した場合は、実態に合わせるために「月額変更届(随時改定)」を提出しなければなりません。

以下の3つの条件をすべて満たした場合に提出が必要です。

  1. 昇給・降給、手当の追加・廃止など、固定的賃金に変動があった。
  2. 変動後の3ヶ月間に支払われた給与の平均額から計算した標準報酬月額が、現在の標準報酬月額と比べて2等級以上の差が生じた。
  3. 変動後の3ヶ月間とも、給与支払いの基礎日数が17日以上(パート等は条件による)ある。
  • 提出時期: 固定的賃金の変動後の給与を支払った月から数えて4ヶ月目

[出典:日本年金機構「随時改定(月額変更届)」]

https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/hokenryo/hoshu/20150515-02.html

4. 毎月の「給与計算」と保険料の控除

毎月の給与計算は、ただ従業員にお金を払うだけでなく、労働基準法をはじめとする法律に基づいた正確な処理が求められます。

  • 勤怠データの集計: 労働時間、残業時間、深夜・休日労働などをタイムカード等から正確に集計します。
  • 支給額の計算: 基本給に加え、法に則った割増賃金(残業代)を漏れなく計算します。
  • 法定控除額の計算: 社会保険料、雇用保険料、所得税、住民税を正確に天引き(控除)します。

特に、毎年3月頃(健康保険)や4月(雇用保険)、さらに先に述べた算定(9月)・月変(随時)の手続きによって、保険料が改定されるタイミングでの給与計算ソフトの設定変更漏れには十分な注意が必要です。


具体例で見る!中小企業B社の悩みと解決策

ここで、架空の中小企業「株式会社B(社員5名)」の事例を見てみましょう。

【B社の状況と失敗例】

社長自らが毎月の給与計算を行っていたB社。4月の評価面談を経て、社員の基本給を一律2万円アップさせました。
しかし、社長は「月額変更届」の存在を知らず、給与計算ソフトの金額を変えただけで手続きを放置してしまいました。

秋になって年金事務所からの定期調査が入り、月額変更届の提出漏れが発覚。
さかのぼって数ヶ月分の社会保険料の不足分を徴収されることになり、翌月の給与から一度に多額の保険料を天引きされた社員から不満が続出してしまう事態に発展しました。

【解決策と教訓】

社会保険の手続きは「知らなかった」では済まされません。このケースでは、以下のような対策が有効です。

  • 労務カレンダーの共有: 「6〜7月は年度更新と算定基礎届の時期」と社内でカレンダー化する。
  • 給与変動時のチェック体制: 「基本給や固定手当を変えたら、3ヶ月後に月額変更の対象になるかチェックする」という運用ルールを設ける。
  • 専門家へのアウトソーシング: ミスが許されない煩雑な手続きを社会保険労務士に任せることで、経営者は本業に専念し、従業員とのトラブルを未然に防ぐ。

手続きに関するよくある質問(Q&A)

Q1. 年度更新や算定基礎届の提出期限(7月10日)を過ぎてしまったらどうなりますか?

A. 期限を過ぎてしまった場合でも、速やかに提出する必要があります。
労働保険の年度更新の場合、提出が大幅に遅れると政府が職権で保険料を決定し、10%の追徴金が課されるリスクがあります。
算定基礎届の場合も、年金事務所から督促状が届いたり、立ち入り検査の対象になったりする可能性がありますので、気づいた時点ですぐに管轄窓口へご相談ください。

Q2. 繁忙期で残業代が多くなり、給与が大幅に増えました。「月額変更届」は必要ですか?

A. 基本給や固定的な手当(役職手当や通勤手当など)が一切変動していない限り、残業代(非固定的賃金)の増減だけでは「月額変更届」の対象にはなりません。月額変更届は、あくまで「固定的賃金の変動」があった月を起点として判断する点にご注意ください。

Q3. 労働保険と社会保険の手続きは、それぞれどこで行えばいいですか?

A. 制度によって提出先が異なります。労働保険(年度更新など)は管轄の「都道府県労働局」または「労働基準監督署」です。一方、社会保険(算定基礎届や月額変更届など)は管轄の「年金事務所」または「事務センター」へ提出します。
現在はどちらも電子申請(e-Gov)を利用することで、窓口に出向くことなく効率的に手続きを進めることが可能です。


まとめ:専門家への相談で確実な労務管理を

従業員を雇用することで発生する「年度更新」「算定基礎届」「月額変更届」「給与計算」は、どれも企業が果たすべき非常に重要な義務です。
これらの手続きを正確かつ期日通りに行うことは、法令遵守はもちろんのこと、従業員が安心して長く働ける信頼関係づくりの第一歩となります。

しかし、度重なる法改正への対応や複雑な計算を、経営者様や少人数のご担当者様だけで完璧に行うのは、時間的にも精神的にも大きな負担です。

この記事で解説した問題や日々の煩雑な手続きについて、社会保険労務士事務所ウェルブルにご依頼いただければ、貴社の個別の状況に合わせた具体的な相談や、正確な手続きの代行・解決が可能です。

「この手当の計算は合っているか?」「うちの社員は月額変更の対象になるのか?」といった些細な疑問でも構いません。経営者様が本業に専念できるよう、労務の専門家がしっかりとサポートいたします。ぜひお気軽にお問い合わせください。

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