2025年6月に成立・公布された労働施策総合推進法等の改正により、カスタマーハラスメント(カスハラ)と並び、就職活動中の学生や求職者に対するセクシュアルハラスメント等の防止が法律で事業主に義務付けられました。
近年の採用活動はSNSの普及やダイレクトリクルーティングによって多様化しており、企業の管理が行き届きにくい場面で問題が起きやすくなっているためです。
これまでのハラスメント対策は「社内の従業員」を守るためのものでした。しかし、今回の法改正により、その保護対象は「社外の求職者」にまで拡大します。
対象となる求職者の範囲
「自社と雇用関係にないが、採用活動等を通じて接点を持つ者」が広く対象となります。具体的には以下の通りです。
- 新卒採用の就職活動中の学生
- 中途採用の求職者
- インターンシップの参加者
- OB・OG訪問を行う学生や求職者
つまり、採用過程に関わるすべての人と言えます。
禁止される具体的なハラスメントの内容と事例
特に問題となるのが「就活セクハラ」と呼ばれるセクシュアルハラスメントや、企業の優越的な立場を背景とした不適切な言動です。
具体的には以下のような内容が禁止・防止の対象となります。
- 面接時の不適切な質問 スリーサイズや交際相手の有無、結婚・出産の予定などを尋ねる性的な質問や、プライバシーに過度に踏み込む質問。
- 優越的な地位を利用した誘い 「内定を出すから」「選考を有利に進めるから」とほのめかし、個人的な食事やホテル等へ執拗に誘う、あるいはわいせつな行為に及ぶこと。
- SNSを通じた私的な接触 リクルーターや若手社員が個人的なSNSアカウントで求職者と繋がり、業務と無関係なメッセージを深夜に送るなどの不適切な距離感を持った行為。
- 威圧的な言動 「内定を辞退するなら損害賠償を請求する」などと脅す、いわゆる「オワハラ(就活終われハラスメント)」に付随する精神的攻撃。
【具体的なトラブル事例(仮定)】
IT企業A社では、採用活動の一環として若手社員に対し「親身になって学生の相談に乗るように」と指示し、OB・OG訪問を積極的に実施していました。
しかし、一部の社員が会社の監視の目がない状況で個人的なSNSを利用して学生と繋がり、深夜に私的な誘いを繰り返しました。
結果として、学生がそのやり取りのスクリーンショットをSNS上で告発し、炎上。A社の採用ブランドは大きく毀損し、内定辞退者が続出する事態となりました。
これは、現場任せの対応とルールの欠如が大きなリスクを引き起こした典型例です。

会社に求められる具体的な対応(雇用管理上の措置)
2026年10月以降、企業は以下の措置を講じることが義務付けられます。義務化に向けて、以下の3つのポイントを押さえて体制を整備しましょう。
- 事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
就活ハラスメントを許さないというトップの明確なメッセージを発信し、就業規則などの服務規程に盛り込む必要があります。また、採用に関わるすべての従業員(面接官、リクルーター、インターン受け入れ担当者など)に対し、面接時のルールやNG質問のガイドラインを策定し、周知・研修を行うことが求められます。 - 相談体制の整備・周知
社内の従業員だけでなく、求職者やインターンシップ生が直接利用できる「相談窓口」を設置する必要があります。単に設置するだけでなく、採用ホームページや募集要項、インターンシップの案内状などに相談窓口の連絡先を明記し、外部の人が迷わずアクセスできる環境を整えることが重要です。 - 発生後の迅速かつ適切な対応・抑止のための措置
万が一、求職者からハラスメントの相談があった場合は、事実関係を迅速かつ正確に確認し、被害者への謝罪や適切な対応を行う体制を整えなければなりません。また、加害者への厳正な処罰と再発防止策の実行が求められます。
出典:厚生労働省「その他のハラスメント(カスハラ・就活ハラスメント)」 出典:厚生労働省「就職活動中の学生等に対するハラスメントの防止について」
読者の疑問を解決!よくある質問(Q&A)
ここでは、就活ハラスメント防止措置について、経営者や人事担当者の方から多く寄せられる質問に回答します。
Q1. 中小企業にも2026年10月からすぐに適用されますか?猶予期間はありますか?
A1. はい、中小企業を含めた「すべての企業」が2026年10月からの義務化対象となります。
過去のハラスメント関連法制(パワハラ防止法など)のような、中小企業に対する適用猶予期間は設けられていないため、早急な対応準備が必要です。
Q2. 義務化に違反した場合、どのようなペナルティ(罰則)がありますか?
A2. 直接的な罰金等の刑事罰は設けられていませんが、労働局による指導や是正勧告の対象となります。
これに従わない場合や、極めて悪質な違反と判断された場合は「企業名の公表」が行われるリスクがあります。企業名が公表されれば、今後の採用活動において致命的なダメージを受けることになります。
Q3. 求職者向けの相談窓口は、社内の従業員用窓口と兼用でも問題ありませんか?
A3. 兼用すること自体は問題ありません。ただし、社外の求職者がその窓口の存在を知り、実際に安心してアクセスできるようにしなければ意味がありません。
自社の採用サイトに窓口の連絡先を明記する、選考プロセスの中で学生に案内を配布するなど、周知徹底のための明確な工夫が必須条件となります。
まとめ:就活ハラスメント対策は「ウェルブル」にお任せください
2026年10月から義務化される就活ハラスメント防止措置は、社内のルールを見直すだけでなく、社外に向けての体制整備が求められる非常に重要な法改正です。
採用活動は企業の将来を担う大切な人材を獲得する場であり、ハラスメントによる企業ブランドの低下や社会的信用の失墜は絶対に避けなければなりません。
「義務化に向けて何から手をつけていいかわからない」
「現場の面接官やリクルーターの意識を根底から変えたい」
とお悩みの経営者様・人事担当者様は、ぜひ社会保険労務士事務所ウェルブルへご相談ください。
当事務所では、今回の法改正に完全対応した採用担当者向けの実践的なハラスメント防止セミナーの実施や、従業員にそのまま配布できる啓発用小冊子の提供など、企業のニーズに合わせた手厚いサポートを行っております。
企業防衛とより良い採用活動の実現に向けて、ぜひお気軽にお問い合わせください。
