残業代の正しい計算方法|深夜・休日労働・月60時間超の割増賃金を解説

「残業代は時給に1.25を掛ければよい」と考えていませんか。22時以降の勤務や休日出勤、月60時間を超える時間外労働では、適用する倍率が変わります。計算のもとになる賃金に手当を入れ忘れると、割増率が合っていても支給額が不足します。

残業代は①1時間あたりの賃金を求める、②働いた時間を区分する、③区分ごとの倍率で計算する、という順に確認します。
給与ソフトを使っている会社も、手当や休日の区分を設定したままにせず、現在の賃金規程・勤務実態と合っているか点検しましょう。

この記事では歩合給を含まない月給制の従業員を例に、深夜・休日労働・月60時間超の計算方法を説明します。

※2026年10月11日時点の公式資料に基づく一般的な解説です。計算例は休憩を除いた実労働時間を使います。原則1日8時間・週40時間の通常の労働時間制を前提とし、変形労働時間制、フレックスタイム制、週44時間の特例、管理監督者などは個別の確認が必要です。会社が法定より高い割増率を定めている場合は、その定めに従います。

残業代の基本式と割増率・支払倍率の違い

月給に含まれていない時間外労働の残業代は、次の式で計算します。この式には通常賃金部分も含まれます。

残業代 = 1時間あたりの基礎賃金 × 対象時間数 × 支払倍率

25%の割増なら通常賃金100%に25%を加えるため、支払倍率は1.25倍です。「1,500円×0.25=375円」は上乗せ分だけの計算です。通常賃金部分も未払いなら、支払う金額は1時間あたり1,875円になります。

労働の区分割増率支払倍率
法定時間外労働(月60時間以下の部分)25%以上1.25倍以上
法定時間外労働(月60時間を超える部分)50%以上1.50倍以上
深夜労働のみ(22時〜翌5時)25%以上1.25倍以上
法定時間外労働+深夜(月60時間以下の部分)50%以上1.50倍以上
法定時間外労働+深夜(月60時間超の部分)75%以上1.75倍以上
法定休日労働35%以上1.35倍以上
法定休日労働+深夜60%以上1.60倍以上

支払倍率には、その時間の通常賃金部分も含まれます。所定労働時間内の深夜勤務など、通常賃金部分が月給等で支払われている場合は、深夜割増分の0.25倍を追加します。同じ時間の通常賃金部分を二重に計算しないようにしてください。

月給から「1時間あたりの基礎賃金」を求める

月給制では、割増賃金の計算に含める月額賃金を月の所定労働時間数で割ります。
月によって所定労働時間数が異なる場合は、1年間における1か月平均所定労働時間数を使います。残業を含んだその月の実労働時間で割る、というわけではありませんので注意しましょう。

ここでは次の給与・勤務条件で計算します。

  • 基本給:月220,000円
  • 職務手当:月20,000円(通常の職務に対して支給)
  • 通勤手当:月10,000円(通勤距離に応じて支給し、除外要件を満たすもの)
  • 年間所定労働日数:240日、1日の所定労働時間:8時間

1か月平均所定労働時間数
240日 × 8時間 ÷ 12か月 = 160時間

計算に含める月額賃金
220,000円 + 20,000円 = 240,000円

1時間あたりの基礎賃金
240,000円 ÷ 160時間 = 1,500円

基本給だけで計算すると、職務手当20,000円が抜けてしまいます。役職手当、資格手当、皆勤手当なども、通常の労働に対する賃金であれば原則として計算に含めます。

通常の労働に対して支払う賃金のうち、計算の基礎から除外できるものは、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金に限られます。

ただし、手当の名前だけでは除外かどうかは判断できません。
例えば、住宅費に関係なく全員に一律で支払う住宅手当は原則として計算に含めます。給与担当者は給与明細の名称だけでなく、賃金規程に定めた支給条件も確認してください。

なお、通常の賃金と明確に区分され、時間外・休日・深夜労働の対価として支払われる固定残業代は基礎賃金に含めません。「固定残業手当」という名前だけで判断せず、労働契約書や賃金規程で、対象となる労働と金額の区分を確認してください。

参考:厚生労働省「割増賃金の基礎となる賃金とは?」

事例1|平日の時間外労働が月20時間あった場合

1時間あたりの基礎賃金が1,500円で、法定時間外労働が月20時間、深夜・法定休日労働がないケースです。固定残業代は支払っていないものとします。

1,500円 × 20時間 × 1.25 = 37,500円

この37,500円を所定労働時間分の月給とは別に支給します。以降の事例も固定残業代はなく、法定の最低割増率で計算する前提です。

ここで区別したいのが、会社の所定労働時間を超えた「残業」と法律上の「時間外労働」です。例えば1日7時間契約の従業員が8時間働いても、週40時間を超えていなければ、追加の1時間は法定時間外労働に当たりません。その1時間分の通常賃金は必要ですが、法律上、時間外労働の25%割増が当然に付くわけではありません。会社独自の支給ルールも確認します。

また、1日8時間を超えた時間と週40時間を超えた時間を集計するときは、同じ時間を二重に時間外労働へ計上しないようにします。

事例2|平日に23時まで残業した場合

所定勤務が9時〜18時で、休憩は12時〜13時の1時間。その後も残業して23時まで働いたケースです。当日の残業を含め、月の法定時間外労働は60時間以下とします。

18時までの実働8時間は月給の対象です。残業した18時〜23時の5時間は、22時を境に分けます。

時間帯計算金額
18時〜22時:4時間1,500円 × 4時間 × 1.257,500円
22時〜23時:1時間1,500円 × 1時間 × 1.502,250円

当日の残業代
7,500円 + 2,250円 = 9,750円

22時〜23時は時間外25%と深夜25%を足して50%割増です。1.25×1.25のように倍率同士を掛ける計算ではありません。

深夜割増は、残業をした日だけに適用するものではありません。所定勤務の一部が22時〜翌5時にかかる場合も対象です。例えば、通常賃金部分が月給に含まれる深夜勤務が2時間あれば、追加する深夜割増は1,500円×2時間×0.25=750円です。

事例3|法定休日に10時間働いた場合

会社が法定休日と定めた日曜日に9時〜20時まで勤務し、途中で1時間の休憩を取ったケースです。実労働時間は10時間になります。休日の振替は行っていないものとします。

1,500円 × 10時間 × 1.35 = 20,250円

法定休日の労働には35%以上の休日割増を適用します。その日に8時間を超えて働いても、時間外労働の25%を重ねて加える必要はありません。この例では10時間すべてを1.35倍で計算します。

ただし、法定休日の勤務が22時〜翌5時にかかる部分には、深夜25%を加えます。同じ法定休日の20時〜23時だけ、休憩なしで3時間働いた場合は次のように計算します。

20時〜22時:1,500円 × 2時間 × 1.35 = 4,050円
22時〜23時:1,500円 × 1時間 × 1.60 = 2,400円

合計:4,050円 + 2,400円 = 6,450円

事例4|土曜出勤でも、35%割増とは限らない

会社の休みの日が、すべて法定休日とは限りません。法定休日は、法律上確保する週1日の休日、または4週間を通じて4日以上の休日です。それ以外に会社が設ける休日を「法定外休日」といいます。日曜・祝日が自動的に法定休日になるわけでもありません。

土日休みで日曜日が法定休日、週の区切りが月曜日〜日曜日の会社を例に考えます。月曜〜金曜に各8時間、合計40時間働いた後、土曜日にも8時間働いたとします。

土曜日は法定外休日ですが、この8時間は週40時間を超えるため、法定時間外労働になります。月60時間以下の範囲で、深夜勤務がなければ、次の計算です。

1,500円 × 8時間 × 1.25 = 15,000円

一方、欠勤などで土曜日を含む週の実労働時間が40時間以内に収まり、1日8時間も超えない場合は、法律上の時間外割増が発生しないことがあります。その場合も、月給に含まれていない追加労働の通常賃金は支払います。

担当者は就業規則で法定休日と週の起算日を確認し、勤務表の実労働時間と照合してください。会社が土曜出勤にも35%割増を支払うと定めているなら、その規定に従います。

事例5|月70時間の時間外労働に、深夜勤務が含まれる場合

月60時間を超える法定時間外労働の割増率は50%以上です。2023年4月1日からは、中小企業にも適用されています。70時間すべてが50%割増になるのではなく、60時間を超えた10時間が対象です。

基礎賃金1,500円で、法定時間外労働が月70時間あり、そのうち60時間を超えた部分の4時間が深夜労働だったとします。それ以外の深夜労働と法定休日労働はないものとします。

区分計算金額
60時間以下:60時間1,500円 × 60時間 × 1.25112,500円
60時間超・深夜以外:6時間1,500円 × 6時間 × 1.5013,500円
60時間超・深夜:4時間1,500円 × 4時間 × 1.7510,500円

月の残業代
112,500円 + 13,500円 + 10,500円 = 136,500円

深夜の4時間は時間外50%に深夜25%を加えるため、75%割増です。勤怠データでは、深夜勤務がどの日・時間帯に発生したかも確認します。

ここでは割増賃金を金銭で支払う例を示しています。労使協定に基づく代替休暇制度を適法に導入・利用する場合は、月60時間超の割増率の引上げ分について別の取扱いがあります。

参考:厚生労働省「月60時間を超える時間外労働の割増賃金率の引上げ」

月60時間の集計では、法定休日労働を分ける

月60時間の判定には、法定時間外労働の合計を使います。法定休日労働は含めません。法定外休日の勤務は、そのうち法定時間外労働に当たる時間を含めます。

例えば、平日などの法定時間外労働が58時間、法定休日労働が8時間なら、60時間判定に使うのは58時間です。両方を足して66時間とし、50%割増を適用する計算はしません。法定休日の8時間は、別に1.35倍で計算します。月60時間を超える時間外労働がある人でも、法定休日の勤務がその理由で1.50倍になるわけではありません。

一方、58時間の時間外労働を終えた後、法定外休日の土曜日に8時間働いたとします。この8時間はすべて法定時間外労働に当たるものとします。深夜勤務がなければ、土曜日の最初の2時間と、その後の6時間で計算を分けます。

最初の2時間:1,500円 × 2時間 × 1.25 = 3,750円
残りの6時間:1,500円 × 6時間 × 1.50 = 13,500円

土曜日分の合計:17,250円

月60時間を数える「1か月」の起算日は、就業規則等の定めを確認します。暦月の1日始まりとは限らないため、給与の締日と勤怠・給与ソフトの設定を照合してください。

毎月の給与計算で確認したい項目

給与を確定する前に、計算担当者が次の項目を確認します。計算結果と未確定事項を社内の確認者に渡す流れまで決めておくと、締日直前の確認を減らせます。

  • 手当の変更:昇給・職務変更・新設手当を賃金規程と照合し、残業単価に反映したか。
  • 所定労働時間:会社カレンダーや勤務条件の変更を、1か月平均所定労働時間数に反映したか。
  • 勤怠の区分:休憩を除き、法定時間外・深夜・法定休日を正しく集計したか。
  • 60時間の境目:起算日と累計時間を確認し、超えた部分を50%以上に切り替えたか。
  • ソフトの計算結果:深夜と時間外が重なる従業員、休日出勤があった従業員を抽出し、計算式と照合したか。

会社が勤怠を15分・30分単位で管理していても、毎日の実労働時間を一律に切り捨てて、その分の賃金を払わない処理はできません。月単位では、時間外・休日・深夜の各時間数の合計について、1時間未満の端数を30分未満切捨て・30分以上切上げとする取扱いが認められています。ただし、日々の切捨てとは別の取扱いです。まずは1分単位で労働時間を把握し、ソフトの丸め設定を点検しましょう。

金額の端数については、1時間あたりの賃金額や割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合、50銭未満を切り捨て、50銭以上を1円に切り上げる処理が認められています。1か月における時間外・休日・深夜の各割増賃金の総額についても同様です。この方法で処理するなら、1,500.40円は1,500円、1,500.50円は1,501円になります。賃金規程等の端数処理ルールとソフトの設定を照合し、常に切り捨てる設定になっていないかも確認してください。

割増賃金の支払いとは別に、時間外・休日労働を行わせるための36協定や上限規制も確認します。上の月70時間の例は計算方法を示したもので、その時間まで自由に残業を命じられるという意味ではありません。

よくある質問

・固定残業代を払っていれば、追加の残業代は不要ですか?

不要とは限りません。まず、固定残業代がどの労働の対価か、通常賃金部分と区分できるかを確認します。
そのうえで、実際の労働時間から計算した支払額と比較します。固定残業代を超える残業代が発生した場合はその差額の支払いが必要です。時間外労働だけを対象にしている固定残業代なら、深夜・法定休日分も含まれているとは扱えません。

・法定休日に出勤し、後日代休を取れば休日割増はなくなりますか?

後から代休を与えても、法定休日に働いた事実は変わらず、休日割増分の支払義務は残ります。
あらかじめ休日と労働日を適法に入れ替える「休日の振替」とは区別してください。振替の場合も、週の法定労働時間を超えれば、時間外割増が発生することがあります。

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