【代表コラム】生成AI時代に、企業が本当に備えるべき人材戦略の提案

生成AIは、すでに特別なものではなくなった

ChatGPTをはじめとする生成AIは、いまや一部の先進企業だけのものではなくなりました。
文章作成、議事録、翻訳、資料作成、情報整理、プログラム作成補助など、日常業務のさまざまな場面で活用されるようになり、「まずAIに聞いてみる」という行動も、珍しいものではなくなりつつあります。

生成AIは、業務効率化、人手不足への対応、サービス品質の向上など、企業経営にとって大きな可能性を持っています。
一方で、私はこの変化を単なる「便利なツールの登場」として捉えるだけでは不十分だと感じています。

いまは「知的分野の産業革命」の入口かもしれない

私は、50年後100年後に今の時代を振り返ったとき、現代は「知的分野の産業革命が起こった時代」と位置づけられるのではないかと考えています。

かつての産業革命が、人間の手作業や筋力を機械に置き換え、工場、都市、労働法、教育制度まで変えていったように、生成AIは、読む、書く、調べる、整理する、考えのたたき台を作るといった知的労働の領域に大きな変化をもたらしています。

つまり、AIの普及によって変わるのは、単に仕事のやり方だけではありません。
企業内で人がどのように育つのか、どのような人材が価値を持つのかという、人材構造そのものが変わり始めているのです。

若手の「入口業務」が減っていくリスク

実際、海外では生成AIの影響を受けやすい職種を中心に、若手や新卒の採用を絞る動きも出てきています。
AIが資料作成や下調べ、定型的な分析、文章の下書きなどを担えるようになると、これまで若手が担当していた「入口の仕事」が減っていきます。

短期的に見れば、人件費の削減や生産性向上につながるかもしれません。
しかし、ここに大きな落とし穴があります。

若手が担ってきた基礎的な業務は、単なる雑務ではありませんでした。
書類を作る、データを確認する、議事録を取る、問い合わせ内容を整理する、先輩の判断を横で見る、間違えて指摘を受ける。
こうした一つひとつの経験を通じて、実務の勘所、判断力、責任感が育ってきていました。

AIを使うには、AIの出力を判断できる人が必要

生成AIを仕事で使うには、AIが生成した結果をそのまま受け取るのではなく、それが正しいか、前提に誤りはないか、自社の実情に合っているか、法的・実務的なリスクはないかを判断できる人材が必要です。

つまり、AIを使いこなすためには、AIより前に、人間側の経験と判断力が必要なのです。

これは人事労務の分野に限らず、営業、経理、法務、開発、顧客対応など、あらゆる職種に共通する課題です。
AIが作ったものを「それらしく見えるから大丈夫」と受け取ってしまうのか、それとも「どこに誤りやリスクがあるか」を確認できるのか。
この差は、今後の企業経営において非常に大きな意味を持つと考えています。

10年後、20年後に起こり得る人材不足

ここで懸念されるのは、10年後、20年後の人材不足です。

現在、若手の入口業務を過度にAIへ置き換えて採用や育成を抑えすぎると、将来「AIを操作できる人」はいても、「AIの出力を疑い、修正し、責任を持って判断できる人」が足りなくなる可能性があります。

これは単純な人手不足ではありません。
企業の中核を担う中堅人材、管理職、専門人材の不足として表面化する可能性があります。

AIで短期的な効率化に成功しても、その裏側で、将来の判断者を育てる機会を失ってしまえば企業の組織力は徐々に弱くなってしまいます。

必要なのは、AI研修だけではなく人材教育の再設計

したがって、企業が今取り組むべきことは、単に生成AIの使い方研修を実施することだけではありません。

もちろん、情報漏えいを防ぐためのルール、プロンプトの基本、業務での活用方法を学ぶことは重要です。
しかし、それ以上に必要なのは、AIを前提とした人材構造と人材教育の再設計です。

たとえば、若手には最初からAIに丸投げさせるのではなく、まず自分で考え、作成し、そのうえでAIの出力と比較させる。
中堅には、AIが作った成果物をレビューし、どこにリスクがあるのかを見抜く力を養う。
管理職には、部下がAIを使って作った成果物について、見た目の完成度だけでなく、本人が本当に理解しているかを確認する力が求められます。

AIで作業を減らしながら、人間の判断経験は減らさない。
この視点が、今後の人材育成において非常に重要になります。

また、社内ルールの整備も欠かせません。
どの業務でAIを使ってよいのか、個人情報や顧客情報を入力してよいのか、AIが作成した文書を外部に出す前に誰が確認するのか。
こうしたルールが曖昧なまま利用だけが広がると、情報管理上の問題や、責任の所在が不明確になるリスクがあります。

AI活用は、教育・規程・承認フロー・評価制度を全体で考える必要があるのです。

AI時代に伸びる会社を考える

今後、業績を伸ばす会社は単にAIを導入した会社ではなく、AIを使いながら人を育てる仕組みを作った会社ではないでしょうか。

AIを使って業務を効率化することは重要です。
しかし、それと同時に次世代の中核人材をどのように育てるのかを考えておかなければなりません。

目先の人件費削減や業務短縮だけを見て若手の経験機会を減らしすぎると、将来、現場を理解し、責任を持って判断できる人材が不足する可能性があります。
つまり短期的な経費削減は自分たちの足場を崩すようなもので、のちのち経営上の大きなリスクとなって顕在化してきます。

10年後、20年後を見据えた経営を

社労士事務所ウェルブルでは、生成AIの活用に伴う社内規程の整備、情報管理ルールの見直し、従業員向け・管理職向けセミナー、人材育成制度の再構築に関するご相談を承っております。

AI時代の労務管理は、単なる効率化の話ではありません。
10年後・20年後に、どのような人材が会社を支えているのかを考える重要な経営課題です。

目先の業務改善にとどまらず、将来の組織力を見据えた人材戦略を、私たちと一緒に考えてみませんか。

お問い合わせはこちらから
LINE登録はこちらから

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次