2026年度の地域別最低賃金改定|全国加重平均55円引上げの目安と企業対応

2026年度の地域別最低賃金は、目安どおりなら全国加重平均で55円上昇し1,176円となる見通しです。(2026/07/30時点)
給与計算を行う経営者や人事担当者にとって、最低賃金改定は「都道府県の金額が決まってから確認すればよい」という話ではありません。

最低賃金に近い従業員が複数いる会社では、対象者の抽出、月給者の時給換算、人件費の試算、給与システムの変更、従業員への説明までに時間がかかります。確定額の公表前でも、準備できることは進めておいた方がよいでしょう。

※本稿は、現時点(2026年7月30日)で公表されている情報に基づいています。都道府県別の改定額と発効日は今後決定されるため、最新情報は厚生労働省または各都道府県労働局の公表をご確認ください。

2026年度の引上げ目安について

厚生労働省は2026年7月28日、中央最低賃金審議会による2026年度の地域別最低賃金額改定の目安を公表しました。

ランク別の引上げ目安は、次のとおりです。

  • Aランク:54円
  • Bランク:56円
  • Cランク:56円

目安どおりに各都道府県で引上げが行われた場合、地域別最低賃金の全国加重平均は、2025年度の1,121円から1,176円となります。
上昇額は55円、上昇率は4.9%です。

全国加重平均とは、都道府県ごとの労働者数を考慮して算出した全国平均です。自社に適用される最低賃金が一律に55円上がるという意味ではありません。

2025年度の全国加重平均の上昇額は66円でした。2026年度の55円はこれを下回る水準ですが、2025年度の66円は都道府県別審議後の確定実績、2026年度の55円は現時点の目安であるため、単純には比較できません。

詳しい目安額と都道府県のランク区分は、厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」で確認できます。

55円はまだ都道府県別の確定額ではない

中央最低賃金審議会が示した金額は、各都道府県で行われる審議の目安です。

今後、地方最低賃金審議会が地域の賃金実態や経済状況などを踏まえて審議し、都道府県労働局長が実際の最低賃金額を決定します。このため、最終的な引上げ額が54円または56円と異なる可能性があります。

新しい最低賃金が適用される発効日も、都道府県ごとに異なります。複数の都道府県に事業場がある会社は、本社所在地だけでなく、それぞれの勤務地について改定額と発効日を確認しなければなりません。

会社が今から確認しておきたいこと

最初に行いたいのは、従業員を勤務地別に整理し、現在の賃金を時間額に換算する作業です。
地域別最低賃金は、正社員、契約社員、パート、アルバイト、嘱託などの雇用形態や呼称を問わず、原則としてその地域で働くすべての労働者に適用されます。

派遣労働者の場合には派遣先の最低賃金が適用されます。また、特定最低賃金の適用対象となる労働者については、地域別最低賃金と特定最低賃金を比較し、高い方の金額を確認します。
特に複数拠点や派遣労働者がいる会社では、「誰に、どの地域の最低賃金が適用されるか」を先に整理しておく必要があります。

月給者も時間額へ換算して確認が必要

最低賃金の確認は、時給者だけを対象に行うものではありません。日給者や月給者についても、賃金を時間額に換算して比較する必要があります。

月給者の場合、概ね次の考え方で確認します。

最低賃金の比較対象に算入できる月給部分÷ 1か月平均所定労働時間
= 最低賃金と比較する時間給額

最低賃金との比較に使用できるのは、毎月支払われる基本的な賃金です。
次のような賃金は、原則として比較対象から除外します。

  • 賞与など、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
  • 臨時に支払われる賃金
  • 固定残業代を含む、所定労働時間外の労働に対する賃金
  • 休日労働や深夜労働に対する割増部分
  • 精皆勤手当
  • 通勤手当
  • 家族手当

総支給額だけを見て「最低賃金を上回っている」と判断すると、計算を誤る可能性があります。基本給と各手当を分け、最低賃金の比較対象に含められる賃金を確認してください。

賃金形態が複数混在する場合や、固定残業代を設けている場合は、個別に計算方法を確認した方が安全です。
対象となる賃金や適用範囲は、厚生労働省「最低賃金制度」でも確認できます。

発効日をまたぐ給与計算への対応

新しい最低賃金は、各都道府県で定められた発効日以後の労働に適用されます。会社が給与の締め日に合わせて適用を後ろ倒しすることはできません。
給与の締め期間の途中に発効日が来る場合は、発効日前後の労働時間を区分できるか、給与システムで単価を切り替えられるかを事前に確認しておきます。

あわせて、次の内容も見直します。

  • 給与システムに登録している時給・日給・月給
  • 賃金規程や給与規程
  • 雇用契約書・労働条件通知書の記載
  • 求人票や採用サイトに掲載している賃金
  • 改定後の賃金を基礎とする時間外割増賃金
  • 固定残業代を設けている場合の不足の有無
  • 社会保険の標準報酬月額について随時改定に該当する可能性

必要な引上げ額から人件費を試算する

企業ごとの人件費への影響は次の考え方で試算します。

改定後の最低賃金見込額- 現在の比較対象時間額
= その従業員に必要な引上げ額

例えば、現在の最低賃金と同額で働く従業員を55円引き上げると仮定し、
1日8時間、月20日、12か月勤務する場合、年間の賃金増加額は1人当たり約10万5,600円です。

同じ条件の対象者が10人いれば、年間約105万6,000円となります。

これは全国加重平均の55円を使った概算であり、時間外割増賃金や会社負担の社会保険料などは含んでいません。
実際の影響額は、勤務地別の確定額、現在の賃金との差、所定労働時間などを使って計算する必要があります。そのためこの試算よりも会社負担額は多くなることを考慮する必要があります。

また、最低賃金に該当する人だけを引き上げると、経験者と新人、一般社員とリーダーなどの賃金差が小さくなることがあります。
各従業員のモチベーションの低下や離職率増加にもつながるため、最低賃金への適合だけでなく、賃金等級や役割とのバランスも確認しておきたいところです。

業務改善助成金は実施前の確認が必要

設備投資による生産性向上と事業場内最低賃金の引上げをあわせて行う中小企業は、業務改善助成金も検討候補になります。
厚生労働省の案内では、2026年度分の交付申請は2026年9月1日から受け付ける予定です。

業務改善助成金は、事業場内最低賃金の引上げ計画と設備投資等の計画を作成して申請し、交付決定後に計画を進める必要がある助成金です。申請前や交付決定前に設備投資などを進めると、助成対象にならない可能性がありますのでご注意ください。

また、賃金引上げや設備投資の時期、対象となる労働者などに要件があるため、利用を検討する場合は発注や賃金改定を行う前に厚生労働省「業務改善助成金」の最新情報をご確認ください。

まとめ

2026年度の最低賃金引上げ目安は全国加重平均で55円ですが、企業が確認すべきなのは全国平均だけではありません。

自社の勤務地と適用される最低賃金を確認し、対象者の抽出、月給者の時給換算、人件費の試算、賃金表と給与システムの変更を一連の作業として進める必要があります。都道府県別の確定額が出る前でも、現在の賃金データを使った対象者の抽出と費用試算までは進められます。

社会保険労務士事務所ウェルブルでは、月給者を含む最低賃金チェック、改定後賃金との比較、対象者一覧の作成、人件費の概算、賃金テーブルや給与設定の見直しを支援しています。
自社でどこから確認すべきか迷う場合は、都道府県別の確定額が公表される前の段階から弊所へご相談ください。

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