退職代行から連絡が来たら会社はどうする?有休・貸与品・離職票まで対応を解説

「従業員本人からではなく、退職代行から連絡が来た。明日から出勤しないと言われているが、会社はどう対応すればよいのか」

突然の退職の連絡。引継ぎも終わっておらず、パソコンや鍵も本人の手元にある。
有休を全部使いたい、離職票も送ってほしいと言われると、何から手を付ければよいか迷うものです。

会社が最初に行うのは、本人の退職意思と代行側の権限を確認し、退職日・有休・貸与品の返却・退職手続きを分けて整理することです。
電話を受けた担当者が、その場ですべてを承諾する必要はありません。確認した内容を記録し、会社の窓口を決めて進めましょう。

退職代行からの連絡で、最初に確認すること

まず、連絡してきた相手の名称、担当者名、連絡先を聞き、次の内容をメールや書面で送ってもらいます。

  • 対象となる従業員と、本人が退職を希望していることを確認できる資料
  • 本人の委任状など、依頼内容と代行側の権限の範囲が分かる資料
  • 希望する退職日、今後の出勤予定、有休の取得希望日
  • 貸与品の返却方法、本人宛ての書類送付先、今後の連絡窓口

初回は、例えば次のように受領と確認の予定を伝えます。回答予定日は、社内で確認できる日を具体的に示してください。

ご連絡を受領しました。ご本人の退職意思とご依頼の範囲が分かる資料、希望退職日、有休の取得希望日をメールでお送りください。内容を確認し、○月○日までに当社の担当窓口から回答予定をご連絡いたします。

資料の確認は速やかに行い、会社独自の書式や押印がそろわないことだけを理由に、退職の申入れを受け付けない対応は避けます。

本人からの依頼と情報を受け取る権限を確認するまでは、給与や健康情報などを相手に伝えないようにしてください。

委任状があれば、どのような交渉でもできるわけではありません。相手が民間事業者、労働組合、弁護士のいずれなのかによって、対応を分ける必要があります。

連絡元会社が確認する点
民間の退職代行事業者本人の意思を伝えているのか、退職条件や金銭について交渉しようとしているのかを区別します。弁護士でない事業者が報酬を得る目的で法律事務を扱うと、弁護士法上の問題が生じ得ます。
労働組合組合名、本人の加入、交渉担当者、団体交渉の申入内容を確認します。労働組合法上の団体交渉に当たる場合、正当な理由のない拒否は不当労働行為となり得ます。
弁護士・弁護士法人受任通知、担当弁護士、代理権の範囲を確認します。退職日や未払い賃金などの交渉を含む場合は、会社側も必要に応じて弁護士へ相談します。

「弁護士監修」「労働組合と提携」という表示だけで判断せず、実際に誰が、どの立場で連絡しているかを確認してください。連絡元の権限に疑問があっても、届いた退職意思の伝達まで放置しないようにします。参考:東京弁護士会「退職代行サービスと弁護士法違反」厚生労働省「不当労働行為救済制度とは」

退職日と最終出勤日を分けて確認する

「明日から出勤しない」と「今日付けで退職する」は、別の話です。有休を使って在籍する期間があれば、最終出勤日と退職日は一致しません。

期間の定めのない労働契約では、労働者からの解約の申入れにより原則として申入れから2週間が経過すると契約が終了します。
会社と本人が合意すれば、それより早い退職日とすることも可能です。
多くの企業では就業規則に「退職の申出は1ヶ月(もしくは2ヶ月前)までに~」という記載をされているかと思いますが、それを理由にいつまでも退職を認めない対応は避けましょう。

一方、有期労働契約の途中退職は、同じ2週間のルールだけでは判断できません。合意の有無や、やむを得ない事由などを確認します。
また、高度の専門知識等を有する人や60歳以上の人との一定の契約、事業の完了までを期間とする契約など、対象外となるものにも注意が必要です。

雇用契約書・労働条件通知書、就業規則、届いた退職の申入内容を照らし合わせ、退職日、最終出勤日、有休を取る日、出勤しない日の扱いを一つずつ整理していきましょう。参考:厚生労働省「退職、解雇、雇止めなど」

退職前の有休は、残日数と取得日を確認する

退職代行を利用したことによって、本人の年次有給休暇の権利がなくなるわけではありません。「引継ぎが終わるまで有休は認めない」と一律に対応することは避けてください。

まずは有休管理簿と勤務カレンダーで、付与日・残日数・取得希望日・退職日までの所定労働日を確認します。有休は、もともと働く予定の日について取得するものですので、会社の休日まで残日数から差し引くことはありません。

事業の正常な運営を妨げる場合には、会社が別の日への変更を求めることができます(時季変更権)。しかし、退職日を越えて変更することはできず退職までに変更先となる日がなければ、時季変更権を行使する余地はありませんので注意してください。参考:厚生労働省「年次有給休暇」

例えば、有休残日数が10日あり、退職日までの所定労働日が8日という架空例では、残りの8日を有休にする整理はできますが、残日数を使い切るために退職日が自動で延びるわけではありません。

有休が足りない日については、出勤するのか、欠勤とするのか、会社と本人が退職日を前倒しして合意するのかを整理します。会社が一方的に退職日を早めて処理することは避けましょう。

貸与品は、一覧と返却方法を具体的に伝える

パソコンやスマートフォン、鍵、社員証、制服などは、貸与台帳をもとに返却対象を一覧にします。「会社の物を全部返してください」だけでは、充電器や入館カードなどが漏れることがあります。

返却依頼には、品名、付属品、送付先、担当者、返却期限、梱包方法、送料の扱いを記載します。来社が難しい場合は、追跡できる配送方法を使うなど、返却が進む方法を調整してください。到着後は、受領日と不足品を記録します。

会社に残っている本人の私物も、送付先や受渡方法を確認します。業務データの保存場所、社内アカウントの権限、メールの引継ぎも担当者が確認しましょう。アカウントは最終の業務利用日を確認し、利用停止・権限変更の担当者と実施日時を決めます。機器の返却まで待たずに、管理者側で必要な対応を行える状態にしておきます。

なお、健康保険の資格確認書が交付されている場合は、有効期限などに応じた返納要否を保険者の案内で確認します。参考:日本年金機構「退職時の資格喪失手続き」

最終給与から貸与品代や損害額を勝手に差し引かない

貸与品が返ってこない、急な退職で業務に支障が出たという事情があっても、それだけで会社が最終給与を支払わなかったり、会社が決めた損害額を一方的に差し引いたりすることはできません。

給与担当者は、最終出勤日までの勤怠、有休取得日、欠勤日、未払いの残業代、社会保険料などの控除を確認します。欠勤控除は賃金規程などの根拠に沿って適切に計算し、退職代行を使ったことへの制裁と混ぜないようにしてください。

賃金について、退職した労働者から賃金の支払請求があった場合は原則として請求から7日以内の支払いが必要です。
金額に争いがあっても、異議のない部分は支払います。通常の給与支払日だけを見て処理せず、請求の有無と受領日も給与担当者へ共有しましょう。参考:群馬労働局「賃金支払いに関する事項のあらまし」

離職票と社会保険の手続きは、返却待ちで止めない

貸与品の回収と、会社が行う退職手続きは分けて進めます。「返却が終わるまで離職票を出さない」とすると、本人の求職者給付の手続きを遅らせることにもつながります。

雇用保険の離職票は、会社が独自に作成して完結する書類ではありません。会社が資格喪失届と離職証明書をハローワークへ提出し、確認を受けて交付される流れです。
担当者は、退職日が分かった段階で賃金台帳、出勤簿、退職の申入れや離職理由を確認できる資料をそろえます。

手続き時期・確認点
雇用保険の資格喪失届・離職証明書原則として、被保険者でなくなった日の翌日から起算して10日以内に、事業所を管轄するハローワークへ提出します。退職による資格喪失日は通常、退職日の翌日です。
健康保険・厚生年金保険の資格喪失届原則として事実発生から5日以内に、事務センターまたは管轄の年金事務所へ提出します。退職による資格喪失日は通常、退職日の翌日です。健康保険組合加入事業所は、組合への手続きも確認します。

雇用保険の「10日以内」は会社の届出期限であり、本人に離職票が届くまでの日数を保証するものではありません。離職票を希望しない59歳未満の方は離職証明書の添付を省略できますが、59歳以上の方は本人の希望にかかわらず必要です。後日、本人から交付を求められた場合も、速やかに対応しましょう。参考:宮城労働局「事業主が行う雇用保険制度の手続」日本年金機構「退職時の資格喪失手続き」

また、退職代行を使ったことだけで、離職理由が自動的に自己都合になるわけではありません。退職に至った事実を確認して記載し、会社と本人の主張が違う場合は、双方の主張と客観的な資料をもとにハローワークが判定します。本人の確認が取れない場合も、勝手に署名せず、管轄ハローワークへ手続方法を確認してください。参考:ハローワーク「雇用保険についてのよくあるご質問」

書類は本人が指定する送付先を確認し、発送日を記録します。代行事業者への送付を求められた場合は、本人の同意と書類を受け取る権限も確認しましょう。
一定の条件を満たす場合は、離職票を本人のマイナポータルに直接交付する仕組みもあります。参考:徳島労働局「マイナポータルを通じた離職票の直接交付」

離職票のほかに、源泉徴収票の交付、健康保険の資格喪失証明書の案内、住民税の異動手続きなども確認しましょう。
会社内で給与・税務を担当する人と、社会保険・雇用保険を担当する人が違う場合は、同じ退職日を共有して処理漏れを防ぐ体制を整えましょう。

よくある質問

本人へ直接連絡してもよいのでしょうか?

本人への連絡の可否を、退職代行の利用だけで一律に決めることはできません。まずは指定された窓口を通じて、本人の意思確認や手続きに必要な連絡を進めましょう。本人への連絡が必要な場合も、目的と方法を整理し、繰り返し電話する、出社や面談を強く求めるといった対応は避けます。弁護士が代理人となっている場合や、接触をめぐる争いがある場合は、会社側の弁護士にも相談してください。

引継ぎをしてもらうまで退職を認めなくてもよいですか?

引継ぎの未了だけを理由に、退職を無期限に引き延ばすことはできません。担当案件、期限、データの保存場所、取引先への連絡事項など、必要な情報を絞って協力を求めます。有休中の出社を前提にせず、会社側でも後任の割当てや資料の確認を進めてください。損害賠償の可否を検討するほどの問題がある場合は、退職手続きとは分けて弁護士へ相談しましょう。

離職票を渡せば、退職証明書を出す必要はありませんか?

離職票と退職証明書は別の書類です。本人から退職証明書を求められた場合は、使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職の事由のうち、本人が請求した事項について、遅滞なく交付する必要があります。本人が求めていない事項は記載してはいけません。参考:厚生労働省「退職時の証明に関するQ&A」

退職対応に迷ったら、ウェルブルへご相談を

退職代行への返答、現場の引継ぎ、給与計算、社会保険手続きを一人で抱えると、確認事項が混ざりやすくなります。
会社の窓口を一本化し、「決まったこと」「確認中のこと」「担当者と期限」を同じ一覧で管理すると、次に行う作業が明確になります。

社会保険労務士事務所ウェルブルでは、労務相談、入退社に伴う手続き、給与計算、就業規則の見直しに対応しています。退職の連絡を受け、何から確認すればよいか迷うときは、届いた通知、雇用契約書、有休管理簿、貸与品一覧を手元にそろえてご相談ください。

退職日や金銭請求をめぐる紛争・交渉については弁護士への相談が必要になる場合があります。まずは、会社が行う手続きと、専門家による判断が必要な事項を整理しましょう。

退職対応・労務管理についてウェルブルに相談する

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