「労働条件通知書に相談窓口はもう書いてあるけれど、何を追加すればよいの?」
2026年10月1日からパートタイム・有期雇用労働者を雇い入れる際に、「待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨」を書面の交付等で明示することが義務となりました。有期契約の更新時も対象です。
まずは、現在使っている労働条件通知書や雇用契約書のひな形を確認してください。
あわせて、従業員から「正社員との賞与の違いはなぜですか」と聞かれたときに、誰が、どの資料を使って説明するかまで決めておきましょう。
従来の4項目に「説明を求めることができる旨」が追加
今回の追加は、パートタイム・有期雇用労働法に基づく労働条件の明示事項に関するものです。
同法施行規則の改正によって、雇入れ時に書面の交付等で明示する事項は次の5項目となりました。これらに加えて、賃金・労働時間・契約期間など、労働基準法上の明示事項も引き続き必要です。
- 昇給の有無
- 退職手当の有無
- 賞与の有無
- 雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口
- 待遇の相違の内容・理由等に関する説明を求めることができる旨(今回追加)
従業員が待遇差について説明を求められることや、会社が求めに応じて説明しなければならないことは以前から同法第14条第2項に定められています。今回、その説明を求められる旨を、雇入れ時に明示する必要が加わりました。
「相談窓口:総務」と書いてあるだけでは、新しい明示事項の記載まで済んでいるとはいえません。
窓口の案内に加え、待遇差の内容や理由等について説明を求められることを、従業員に伝える記載を確認します。
厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
対象者は、名称ではなく勤務時間と契約期間で確認する
本記事では、会社が直接雇用するパートタイム・有期雇用労働者について説明します。対象を確認するときは、「パート」「契約社員」といった社内の呼び方だけで判断しないようにしてください。
- 短時間労働者:同じ会社(事業主)に雇用される通常の労働者より、1週間の所定労働時間が短い人。雇用期間の定めがないパートも対象です。
- 有期雇用労働者:期間の定めがある労働契約で働く人。フルタイムの契約社員や、期間を定めて再雇用する嘱託社員なども対象となります。
通常の無期雇用・フルタイムの正社員まで、今回の追加事項を一律に明示する改正ではありません。担当者は、雇用契約書の「契約期間」と「所定労働時間」を見て、対象者を確認しましょう。
※派遣労働者については、労働者派遣法に基づく明示ルールを別途確認する必要があります。
労働条件通知書の記載例と、書面・電子での渡し方
たとえば、労働条件通知書の「その他」の欄などに、次のような記載を加える方法が考えられます。以下は、厚生労働省のモデル様式を参考にした記載例です。
待遇の相違の内容・理由等に関する説明について
当社の通常の労働者(正社員)との間の待遇の相違の内容・理由等について、下記の窓口に説明を求めることができます。
申出先:[部署名]
担当者:[役職・氏名]
連絡先:[電話番号・メールアドレス]
「通常の労働者」は、会社で使っている「正社員」などの呼び方に置き換えて記載できます。従業員が迷わず申し出られるよう、説明を求める際の申出先も記載しておくことが望ましい対応です。
既存の相談窓口がその申出先を兼ねても構いませんので、実務上は多くの会社で兼務となるのではないでしょうか。
労働条件通知書と雇用契約書が一体になった書式を使う場合も、必要な事項を明示できるようにします。通知書に余白がない場合には、別紙で明示する方法も考えられます。
口頭で「質問があれば聞いてください」と伝えるだけでは、書面の交付等による明示の代わりにはなりません。電子メール等で明示する場合は、本人がその方法を希望していることや、受け取った内容を出力して書面を作成できることなど、所定の要件を満たす必要があります。
書式を見直すときは、厚生労働省の改正後モデル労働条件通知書と照合すると、追加欄と既存の相談窓口欄を確認しやすくなります。

採用時だけでなく、有期契約の更新時にも明示する
有期雇用労働者については、労働契約の更新も「雇い入れ」に当たりその都度労働条件の明示が必要です。
2026年10月1日以降に有期契約を更新する人についても、新しい明示事項を反映します。
たとえば、9月に採用し、11月に有期契約を更新する人がいる場合は、11月の更新時に使う書式を改正版にしておきます。「ずっと勤務している人だから」と、以前の通知書をそのまま使い続けないようにしてください。
採用・更新担当者は、次の資料を照合すると、記載漏れを見つけやすくなります。
- 通知書・雇用契約書のひな形:今回の追加事項と、昇給・賞与・退職手当・相談窓口の記載があるか。
- 契約更新の対象者一覧:10月1日以降の更新時に、改正版を使う運用になっているか。
- 作成・交付の手順:担当者のパソコン、共有フォルダ、雇用契約システムなどに古い書式が残っていないか。
- 交付した書面・送付の記録:対象者に、必要事項を記載した書類を実際に渡せているか。
ひな形の変更日と利用を始める日を決め、採用担当者と更新担当者へ共有しておくと、担当者ごとに異なる書式を使うことを防ぎやすくなります。
待遇差を説明できるよう、規程と実際の働き方をそろえる
通知書を修正したら、次に確認したいのは、従業員から説明を求められたときの対応です。説明の対象には、基本給、賞与、各種手当、福利厚生などの待遇差の内容・理由等が含まれます。たとえば、賃金や教育訓練などの扱いを決めるときに考慮した事項も、説明の対象に含まれます。
正社員とパートが同じ業務を担当する会社で、パートの従業員から「正社員には賞与があるのに、私にはないのはなぜですか」と質問されたとします。
このとき、「パートだから」「規程にそう書いてあるから」という説明だけでは、待遇差の理由を十分に示せません。
会社は、比較する正社員の選び方、仕事の内容や責任、配置変更の範囲、賞与の目的と支給基準などを確認し、それらがどのように賞与の扱いに結び付いているかを説明する必要があります。
担当者が準備する資料としては、就業規則・賃金規程、賞与や手当の支給基準、業務分担が分かる資料などが考えられます。規程と実際の仕事が食い違っている場合には、記載上の理由を繰り返す前に、実態を確認してください。
今厚生労働省の施行通知では、資料を使って口頭で説明する方法のほか、説明すべき事項をすべて記載した、本人が理解しやすい資料を交付する等の方法も示されています。
口頭で説明する場合には、使った資料等を交付することが望ましいとされています。説明資料は、比較対象となる従業員が特定されないように配慮しましょう。
個人情報保護等のため交付が難しい場合も、求めに応じた閲覧など説明内容を確認できる方法を検討します。
説明を求めたことを理由とする解雇その他の不利益な取扱いは、同法第14条第3項で禁止されています。窓口担当者だけでなく、店長や現場の管理職にも、質問を受けた際の連絡先と対応を伝えておきましょう。
よくある質問
すでに働いている人全員に、通知書を配り直す必要がありますか?
この追加事項は、施行日以降の雇入れ時の明示に関するものです。10月1日を迎えたことだけを理由に、既存の従業員全員へ一律に再交付するという整理ではありません。ただし、有期契約を更新する場合は、その更新時に対応が必要です。既存の従業員にも、説明を求められることと申出先を周知しておくと、相談を受ける運用をそろえやすくなります。
正社員との待遇差がない場合も、記載が必要ですか?
対象となるパートタイム・有期雇用労働者には、明示が必要です。現在の待遇差の有無によって、この明示事項を省略できる仕組みではありません。
この文言を記載すれば、待遇差への対応は済みますか?
文言を明示することと、待遇差の内容・理由等を説明すること、待遇そのものが法に沿っていることは、それぞれ確認が必要です。説明を求められた場合の対応を準備し、理由を整理しても説明しにくい差があれば、待遇の見直しが必要かを検討します。
現在の通知書と賃金規程から、改正対応を確認する
まずは、現在使っている通知書や雇用契約書を1部開き、新しい明示事項が入っているか確認しましょう。
そのうえで、直近の契約更新対象者と、説明を受け付ける担当者を確認してください。
社会保険労務士事務所ウェルブルでは、労務相談、労務関係書式の提供、就業規則・諸規程の整備に対応しています。
「自社の書式にどう追加すればよいか」「賞与や手当の差をどう説明すればよいか」とお困りの場合は、現在の通知書・雇用契約書・賃金規程をもとに、会社の実務に合う対応を一緒に整理します。
※本記事は2026年10月7日に確認した公的資料に基づく一般的な解説です。個別の待遇差の取扱いは、職務内容、責任、配置変更の範囲、待遇の性質・目的などを踏まえて判断します。
